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                                             平成26年6月4日
                                            日本医学脱毛学会
                                            理事長 亀井康二
                                             会長 川口英昭
                                             関連諸団体各位
―エステ脱毛について―
 
お願い
 
 すでに新聞、テレビ等の報道でご存知と思いますが、平成26年4月8日姫路のエステサロン経営者が「光脱毛」を医師免許のない従業員に施術をさせて、逮捕される事件が起こりました。顧客がやけどを負ったことがきっかけでした。
 
 また昨年の9月には、俗にドクタカ事件と呼ばれる高橋知之医師指導のエステ用脱毛機器では薬事法違反、無資格者に同機器を用いて光脱毛をさせたという医師法違反の裁判が大阪の地方裁判所であり、高橋医師側の敗訴が確定しました(高橋医師は控訴せずに結審)。
 
 平成13年11月8日に発令された、厚生労働省医政局医事課長から各都道府県衛生主管部(局)長に宛てた通知「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて?(医政医発第105号 参考資料1 これは医師法第17条を補完するもので罰則を伴います)」では、「用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反する(下線は当方で追加)」としています。ここで大切なのは、「毛乳頭、皮脂腺開口部」に限定されず「等」が入っている事です。判決によりますと、①毛乳頭や皮脂腺開口部が破壊されていなくても脱毛が起こる以上、何らかの周囲組織、特に毛の幹細胞が熱変性による「破壊」を受けていること、②厚労省の通知にある「等」にはこれらの組織や細胞が含まれ得ることを踏まえ、医師法違反であると裁判所が判断したということです(裁判を傍聴した川口英昭会長談)。
 
 厚労省の105号通知によれば、エステサロンやエステ業者向けに光脱毛器を製造している機器メーカーの、「毛乳頭、皮脂腺開口部が破壊されなければ」無資格者が光脱毛(業界ではライト脱毛ないしは制毛、一時的な除毛・減毛などという呼び方をしています)をしても良いという解釈は通じないと認識すべきで、機器が医療用であるか否かを問わず電気針脱毛は勿論、レーザー脱毛や光脱毛など、強力なエネルギーを有する光線を照射し脱毛を行えば、これは医療行為になることは明白であります。
 
 今回、エステ脱毛によりやけどを起こしたと言うことは、かなり強力なエネルギーを照射したことになります。平成13年に厚労省から上記の105号通知が出され、いわゆる脱毛現象が生じるような強いエネルギーを照射することは、全て医療行為であるという判断が下されました。翌年の平成14年に、経産省と東京都の指導で行われた日本エステティック研究財団(参考資料3)による臨床試験の実施要項では、「毛の再生機構を破壊せず、90%以上の毛が再生する機種を用いた脱毛はエステでも安全に施術ができる、と報告されています(参考資料2より)。また最近の報告(参考資料2)によりますと、DEKA社の脱毛器では95%前後の毛が再生するとされていますが、そのような弱いエネルギーでやけどを起こす訳がありません。これは実際の施術に際して、脱毛器の照射出力を上げているとしか考えられません。とすれば脱毛器の製造・販売会社は薬事法違反であり、また施術者は医師法違反に問われます。またエステ脱毛では、衛生上の不利益が生じるおそれもあります。
 
 勿論、医療機関で施術を受けてもやけどの可能性が全くないとは言えませんが、その場合でも医療機関であれば、迅速かつ適切な対応ができます。
 
 エステ業界では平成14年に経産省から(参考資料4)、平成16年に東京都から(参考資料5)だされた文章を盾にして、やけどさえ起こさなければ光脱毛も許されるという、消費者の健康を無視した勝手な解釈を出しているようですが、実際に消費者被害が出ていることも事実です。エステ業界の振興は経産省かもしれませんが、施術はあくまでも人体を対象としていますので、厚労省の法規制(医師法、医療法、薬事法など)が優先することは言うまでもありません。ここに経産省や東京都が、消費者の健康を無視して口を挟むことはできません。光脱毛といえども、このようなエネルギーを用いた脱毛行為はあくまでも人体を対象とした治療行為であり、厚労省発の第105号通知と経産省や東京都から出された単なる報告とどちらが法的に上位にあるかは自明の理です。
 
 以上お知らせ致しますとともに、日本医学脱毛学会では現状を鑑みて消費者保護の立場から、脱法的なエステ脱毛行為は絶対に認めない方針ですので、よろしくご理解ご協力の上、関係各位にご周知のほどお願い申し上げます。
 
 
 
参考資料1
1、 「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」厚生労働省医政局医事課長、医政医発第105号通知、平成13年11月8日
2、 美容機器を用いた制毛処置における臨床的、組織学的検討:尾見徳弥、他、日本美容皮膚研究会誌(JADS)、1:24-28、2008
3、 「エステティック事業における適正な施術の在り方について―美容レーザー脱毛とケミカルピーリングの適正な施術の在り方について―」経済産業省サービス産業課、平成14年3月
4、 「エステティックサロンにおけるレーザー等を利用した脱毛機の安全性について」東京都商品等の安全問題に関する協議会、平成16年7月
5、 公益財団法人日本エステティック研究財団
6、 日本エステティック振興協議会
7、 ウィズ・アスhttp://www.withus-corp.jp/support.html
 
参考資料2 
 2014年4月8日付の産経新聞は「無資格で光脱毛、医師法違反容疑で姫路のエステ店経営者ら逮捕」の見出し記事で、「脱毛のために機械で光を照射して毛根を破壊する医療行為を、医師免許を持たずに行ったとして、兵庫県警生活経済課などは8日、医師法違反(無資格医業)容疑で、同県姫路市東駅前町のエステティックサロン『ハニーフラッシュ』の経営者、亀山道弘容疑者(50)と元店長の女2人を逮捕した」と報じている。
 亀山容疑者は「脱毛行為が悪いこととは思わなかった」と容疑を否認しているという。逮捕容疑は、「医師免許を持たずに、県内の26~46歳の女性客4人に機械を使って光を照射して、脱毛させた」ことで、4人はひざや腕にやけどを負った。記事によれば、機械を使って「パルスライト脱毛」と称する手法を用い、客に「ほとんど痛みはない」と説明していたという。県警には23年ごろから、同店の利用者約310人から「皮膚が赤くなった」などと苦情が寄せられており、亀山容疑者らは、医師免許を持たない30人以上の従業員にも脱毛させていたという。

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