日本医学脱毛学会
Japanese Society of Hair Surgery & Medicine
前期7単位)上肢の脱毛の諸注意
a. 毛根の短い毛の脱毛法
b. 上肢の脱毛の諸注意
●特徴
a. 毛の成長期、休止期共に3~4ヶ月との報告があります。
b. 伸側に毛が多く、屈側に毛が少ない・
c. 毛は直毛で下肢に比べると毛根が短い。
d. 毛流が比較的はっきりしている。
e. 下肢に比べ痛みが少ない。
f. 上腕は前腕と比べ皮膚の弾力が大きい
g. 手指、手背は下床に骨があり、毛根が短い
●脱毛の実際
a. 対極板は脱毛直下に置く。手指、手背は対極棒を使用することもある。
b. 毛量の多い場合は、間引き脱毛を行なう。
c. 安定した体位がとり難いため、クッションやタオルなどで体位の工夫が必要である。
d. 上腕は皮膚の伸展を十分に行なう必要がある。
e. 手指、手背の脱毛は、皮膚を伸展させるために、手を握らせた状態で脱毛すると良い。
f. 手指の場合、毛を無くすことにより、毛穴が目立つ場合もあるため、その旨を患者に伝えておく。
g. 点状の発赤が1ヶ月前後続く患者もまれに診られるので、秋から春にかけて脱毛を行なうのが理想的である。
●上肢脱毛後の注意事項
a. 下肢と同じように脱毛後、赤色小丘疹が2〜3日みられ、点状発赤が数日間つづきます。なお、点状発赤が1が月前後続く患者もまれに見られるので、秋から春にかけて脱毛を行なうのが理想的です。
b.脱毛後1〜2ヶ月間、皮膚表面に触れると「ピリピリ」するという患者がまれにみられるが、これも時間とともに消失します。
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(1)前腕
a. 特徴
1)毛の成長期。休止期ともに3〜4ヶ月との報告があります。
2)伸側に毛が多く、屈側に毛が少ない。
3)毛は直毛で、下肢に比べると毛根が短い。
4)毛流が比較的はっきりしています。
5)下肢に比べ痛みが少ないので、ほぼ全員氷冷却脱毛が可能です。
b. 脱毛日程
下腿部同様に理想的には、一旦毛を剃って1ヶ月後に成長期毛に毛にそろえて、第1回目を開始するのが良いが、伸ばしたままの状態で脱毛を開始してもかまわいません。下肢の毛と比べて毛の伸びが遅いので、同一部位は2ヶ月毎の脱毛で充分です。なお、脱色などの処理は脱毛2ヶ月以上前から禁止します。
c. 手技に実際
【氷冷却脱毛】
1)対極板は脱毛部直下に置きます。
2)脱毛しやすいように、下肢よりも小さめの(10本位の毛が入るような)マス目を引きます。
3)毛の多い患者は1回目を間引き脱毛とします。
4)女性の場合、U2707針、通電は1/2秒〜1秒(最近はS針・1/4~1/2秒)、出力は5〜6とします。男性の場合、太く長いのでS3410針(太い場合はL針で1/4秒も検討)を用いる事が多い。
5)前腕部の場合、下肢の毛よりも毛孔が確認し難いため、拡大鏡(ルーペ)を使用しながら脱毛した方がより正確です。(他の部位でも拡大鏡脱毛を習慣づけるとトラブルは少なく成します)
【麻酔下脱毛】
ほぼ全員の患者が氷冷却脱毛可能ですが、脱毛時間短縮の為、強く痛みを訴える患者に対しては、筋皮神経ブロック麻酔が有効です。脱毛条件は氷冷却脱毛とおなじですが、適宜冷却処置を施しながら脱毛していきます。局所浸潤麻酔は行ないません。
※ この部位で麻酔が必要になる患者はいないと思います。
(2)上腕
a. 特徴
1)前腕と比べ皮膚の弾力が大きい。
2)痛みが少ないので、ほぼ全員の患者に対して氷冷却脱毛が可能です。
b. 脱毛日程
前腕と同様な日程で行ないます。
c. 手技の実際
基本手技は前腕と同様ですが、より一層、手指による皮膚の伸展を充分に行なう必要があります。
【スライド通電】
毛根が短い時の脱毛法(他の部位でも毛周期に時期にもよる)
脱毛術が慣れまでは行なわない。
1)通電開始時は確実に絶縁部が挿入されている事を確認する。
2)浅い毛乳頭もあり深い毛乳頭もあるので、通電中は図のように、次第に絶縁部を刺入していきます。
(3)下腿
a.特徴
(1)毛の休止期は3〜4ヶ月。成長期は4〜6ヶ月との報告があります。
(2)脱毛希望者が女性の場合。ストッキングを取った直後に脱毛を始めるとことが多い。したがって皮膚上に出ている毛の方向は皮膚内の毛根の方向と一致しない事がしばしばです。この意味で術者は毛流の方向について熟知しなければなりません。皮内の毛はほぼ一定した方向があるので、その方向に確実に針を刺入する事が重要です。拡大鏡で観察すると皮内の毛根部が透けてみえるので、皮膚に印(毛流の方向)を付けておくのも一案です。
(3)下腿部(特に外側)の場合、皮膚と毛の角度(毛根傾斜)は20〜35度と、かなり小さい事を念頭におきます。
(4)比較的痛みを感じる部位は、足関節部近くと脛骨直上部です。
b. 脱毛日程
数ヶ月毛を伸ばした状態で脱毛をすると毛量が非常に多いので、毛を剃って2〜3週間後の成長期毛にして第1回目を開始すると脱毛しやすくなり、効率が良くなります。その後、同一部位は1ヶ月毎に脱毛します。この様にすれば、常に脱毛しやすい成長期毛を脱毛できます。なお、脱毛開始1ヶ月前から脱色等の処理は一切しないように指導します。
【参考】
※ 施設によっては2ヶ月毎でも良いと思いますが、1回の脱毛時間が長くなります。レーザー脱毛では2ヶ月1回が良いと思います。
c. 手技の実際
【氷冷却脱毛】
(1)対極板は脱毛部直下に置きます。
(2)アイスパックの圧迫法はぜん前述した通りです。
(3)毛根が長めの場合は S3410針、L3007針、短めの場合は、S2707針を用います。(最近では太めで短い通電時間を選択するので、L35またはC30を使う事も多い)ごく希に毛根が非常に長い患者がありますが、その場合はL4010針、S4015針を使用します。
(4)氷冷却法の場合、通電時間は1/2秒〜1秒、通電出力6、ただし、皮膚反応が強い場合は出力を 5ないし5.5とします。
(5)S型針を使用する場合は、真っ直ぐ毛に沿って刺入し通電して抜去します。決して刺入後に針の角度を変えない。寝ている毛でも、これは同様です。
(6)脱毛開始直後は、数秒の氷冷却と毛1本に対する通電を交互に施行していきますが、次第に皮膚温が下がっていきますので脱毛数を2本、3本、4本と増やしていきます。ただし、足首等の痛みの強い所は、1本づつ脱毛していっても良い。
(7)下腿の場合、脱毛範囲が広いので適宜、ライトをあわせて常に明るい中で脱毛出来るように心掛けます。なお、無理な姿勢で脱毛を続けると針の刺入角度がずれるおそれもありますので、術者は脱毛中すわる位置を適宜考慮しなければなりません。
(8)下肢の毛の脱毛効果が悪い原因は、
ア)毛に沿って刺入されていない。
(毛根傾斜が小さいのに深めに刺入している場合が多い。技術的な問題以外に、不十分な照明下で脱毛している事による場合もあります。)
イ)針の選択が誤っている。
ウ)通電時間が短い、電気が通じていない。
ヱ)脱毛部が濡れたまま脱毛している。
オ)対極板を直下に置いていない。
カ)凝固物が付着したままの針で脱毛している、
などが考えられます